適正価格について~不正建築を巡って~
2015年12月15日-
文字数=約3,800字
- RIE
- Taka先輩!
久しぶりです。 - Taka
- やぁ、RIEちゃん。
久しぶり。 - RIE
- 何食べているんですか?
ん?
ハンバーグですね。 - Taka
- そう。
ここのハンバーグ美味しいんだよ。 - RIE
- じゃ、RIEもそれにします。
Taka先輩の前の席に座っても良いですか? - Taka
- もっちろん!
- RIE
- じゃ、注文してきますねぇ。
- Taka
- (ラッキーだな、今日は。)
- RIE
- ただいま~。
美味しそうなハンバーグでしたので、思わず2皿取って来ちゃいました(o^-^o)
一緒に食べましょう! - Taka
- ところで、今日はどうしたんだい?
- RIE
- なんか、最近、杭が地盤に届いていないという建築の不正とかが多いじゃないですか!
なんでそういう不正が起こるんですか? - Taka
- なんでだろうねぇ・・・
- RIE
- えっ?
Taka先輩も分からないんですか?
じゃ、ここに来た意味が・・・ - Taka
- あ~、いやいや、分かる分かる、よく分かるよ。
- RIE
- なぁんだ、良かった(o^∇^o)ノ
それで? - Taka
- え~と、
僕の見立てでは、建築業界の「請負の構造」に原因の一端があるんじゃないかと。 - RIE
- でも、請負契約って、下請自由ですよね?
請負人は、「仕事完成義務」を負うわけだから、仕事を完成させるのであれば誰に下請けさせてもいいと習いましたよ、大学の民法の時間に。 - Taka
- よく勉強しているね。
たしかにそうなんだよ。 - RIE
- お褒めの言葉、ありがとうございます。
- Taka
- 下請は自由で、そのこと自体に法的な問題があるわけではないし、構造的に問題があるわけでもないんだ。
ただ、下請代金と元請代金の差額の問題があるんだ。 - RIE
- 下請企業は、元請企業から請負代金をもらうんですよね?
- Taka
- そう。
- RIE
- ということは、元請代金全額を下請企業がもらうわけではないですね?
- Taka
- 当然そうなるね。
そうじゃないと、元請企業はまったく儲けがないからね。 - RIE
- ということは、元請代金と下請代金との間には当然に差額が発生します。
- Taka
- その差額が、適正値を超えると最近起こった不正建築の問題が出てきやすくなると思うんだ。
- RIE
- 下請企業が赤字状態で請負工事をせざるを得ないということですかね?
- Taka
- 差額がありすぎるとそういうことも起こるだろうね。
- RIE
- 赤字になるんだったらその下請を受けなければいいんじゃないですか?
- Taka
- 理屈ではそうだね。
だけど、そうは言ってられないんだよ。 - RIE
- なんでですか?
- Taka
- それは、下請業者は元請企業から仕事をもらうことで経営が成り立っているからなんだよ。
- RIE
- ん?
それっておかしくないですか?
だって、‟下請企業は元請企業から仕事をもらうことで経営が成り立っている”んですよね。
でも、下請額では赤字になるんだったら、下請企業は元請企業から仕事をもらっていても経営は成り立っていませんよ!
明らかにおかしいです! - Taka
- その仕事を単発で見るとたしかに、RIEちゃんが言ったとおりなんだけど、実際には、継続的に下請を受ける関係にあるんだよ、元請企業と下請企業の関係は。
だから、一度元請企業からの依頼を断ると次から仕事の依頼がなくなるわけ。 - RIE
- なるほどぉ。
そうなると、赤字であっても下請を受けるしかないですね。
可哀想。 - Taka
- 現実はそういうことが多いようだよ。
たとえば、A社が2億円で甲から建築工事を請け負いました。
そのA社がB社に下請させました。
下請代金は、3000万円としよう。 - RIE
- え~、それって、元請企業が1億7000万円の儲けを出すということじゃないですか!
いくら何でもそれはぼったくりすぎでしょう|)゚0゚(| - Taka
- だから、‟たとえば”なんだって。
その方がわかりやすくなるからね。
で、そうすると、下請企業のB社は3000万円から利益を出す必要がある。
どうすると思う? - RIE
- それは、コスト削減をするはずですよ。
- Taka
- うん。
具体的にはどういうことをするんだろう? - RIE
- やっぱり、コストで一番高くつくのは人件費だと思いますからリストラとかするんじゃないでしょうか?
- Taka
- するだろうね。
でも建築の基本は、技術を持った人だよね?
だって、その人が工事をするんだから。 - RIE
- それはそうです。
- Taka
- その肝心の人をリストラしちゃうと、熟練した技術人が減っていくんじゃないだろうか?
- RIE
- そうなりますね。
そうすると、手抜き工事が横行することに・・・
会社が存続の危機に! - Taka
- そうだろうね。
そこで、人件費を削らないでコストを削減する方法を下請企業は考えるだろうね。
何を削ると思う? - RIE
- 建築だと、材料費自体でかなりのコストがかかると思いますから、材料費をどう減らすかを考えそうです。
- Taka
- うん。
不要な材料費を減らすことは当然だが、建築に必要な材料まで削ったら? - RIE
- 建物の倒壊の危険が・・・
- Taka
- うん。
だから、元請代金と下請代金との間に差がありすぎると不正建築が横行することになりやすいと思うんだよ。 - RIE
- たしかにそうですね。
- Taka
- そのためにも、下請代金の‟適正さ”を確保する必要があると僕は思うんだ!
- RIE
- それはそうですね。
でも、たしか、「アダム・スミス」さんが、‟神の見えざる手”によって、市場価格は均衡点に近づいていくと言っているようですよ。
これによると、元請・下請に価格設定を任せておけば、下請代金の‟適正さ”は確保されるんじゃないですか?
下請企業の方が圧倒的な数を占めているはずですから。 - Taka
- ‟自由放任主義”ということだね。
- RIE
- そうです。
「アダム・スミス」さんの主張もそういうことですよね? - Taka
- たしかに、これまではそう考えられてきた。
「見えざる手」は、利己心にもとづいた個人の利益追求行動を社会全体の経済的利益につなげるメカニズム、すなわち市場の価格調整メカニズムとして理解されてきた。(堂目卓生【アダム・スミス 『道徳感情論』と『国富論』の世界】(中公新書・2008年)「はじめに」ⅰ頁)
ところが、
これに関して、最近違うんじゃないか?という議論がなされているんだよ。 - RIE
- 違うんですか?
学校では、利己心に基づく個人の利益追求を通じて市場価格は均衡点に近づく、と習いましたが・・・ - Taka
- 僕もそう習ったんだけどね。
「アダム・スミス」の主著は言わずと知れた『国富論』だよね(正確には、『諸国民の富の性質と原因の研究』だけどね)。
でもこれ以外に、もう一つの著書があるんだ。
それが、『道徳感情論』という本なんだ。
この本で「アダム・スミス」が言っている『同感(sympathy)』が重要なキーワードになってくる。 - RIE
- 『同感(sympathy)』って何ですか?
同じ思い、って感じですかね。 - Taka
-
他人の感情や行為の適切性を判断する心の作用(堂目・前掲書30頁)
を『同感(sympathy)』と言うんだ。
この『同感(sympathy)』がない個人が個人の利益を追求しても市場価格は均衡点に近づかないらしいんだよ。
実際の市場を見ればそれも分かる気がするけどね。 - RIE
- じゃあ、個人の利己心にもとづいた利益追求が社会全体の利益をもたらすという「アダム・スミス」の主張はなんだったんですか?!
- Taka
- 堂目先生は、こうおっしゃっている。
たしかにスミスは、『国富論』において、個人の利己心にもとづいた経済行動が社会全体の利益をもたらすと論じた。しかしながら、そこで想定される個人は、社会から切り離された孤立的存在ではなく、他人に同感し、他人から同感されることを求める社会的存在としての個人なのである。社会的存在としての個人が、胸中の公平な観察者の是認という制約条件のもとで、自分の経済的利益を最大にするように行動する。これが、スミスが仮定する個人の経済行動なのである。(堂目・前掲書272頁)
- RIE
- つまり?
- Taka
- つまり、
「アダム・スミス」が言った‟個人の利己心”にいう‟個人”とは、社会から切り離された孤立的存在者ではない、ということだ。
他人に同感し、他人からの同感を求める‟社会的存在としての個人”のことをいうんだ。 - RIE
- へぇ~、そうなんですね。
そういう‟社会的存在としての個人”を想定すれば、たしかに個人の利己心にもとづいた経済行動が社会全体の利益をもたらすことになりそうですね。
ということは、Imagine
が重要になりそうですね。
- Taka
- そうそう、そういうことなんだよ!
- RIE
- 元請と下請の関係でいうと、元請は、下請に『同感(sympathy)』し、下請が適切な利益を確保することができるように下請金額を設定する必要があるということですか?
- Taka
- そういうこと!
そういう『同感(sympathy)』する‟社会的存在としての個人”で構成された社会においてこそ社会の富が最大化するんだ。 - RIE
- ふ~ん。
なるほどです!
さすが、Taka先輩です。
これで、真栄里先生をギャフンと言わせることができます。
今度こそ、リベンジするわよ~! - Taka
- え~~(ノ_-。)
(また、真栄里先生・・・)
読了≒6分
---学食にて---
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