セブンイレブン敗訴確定(「見切り販売」妨害事件)
2014年10月16日約1500字(読了≒3分)
目次
ことのあらまし
セブンイレブンの加盟店が廃棄前の弁当などを値下げする「見切り販売」を実施しようとしたところ、その実施をセブンイレブン・ジャパン側に妨害されたとして1億3900万円の損害賠償請求訴訟を加盟店のオーナーがセブンイレブン・ジャパンを相手に裁判所に提起した、という事件です。
もし「見切り販売」を実施したら店は続けられない、などとセブンイレブン・ジャパンの社員に言われた加盟店のオーナーが、「見切り販売」の実施を取りやめざるを得なかった、ということです。
最高裁の判断
gooニュースによると、
最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)は14日付で、賠償を命じた東京高裁判決に対する同社の上告を退ける決定をした。
ということです。
これにより、東京高裁判決が確定しました。
東京高裁判決は?
1億3900万円の損害賠償請求に対して、東京高裁は、「加盟店の合理的な経営判断の機会を失わせた」と指摘して1100万円の支払いをセブンイレブン・ジャパンに命じました(2013年8月)。
法的構成は?
おそらく、不法行為に基づく損害賠償請求です(民法709条)。
この請求で重要なポイントは、
①違法行為(故意・過失行為)
②権利・利益侵害
③損害
④因果関係(①と②、②と③の間)
です。
ここで、東京高裁は「加盟店の合理的な経営判断の機会を失わせた」と指摘しています。
これは、「見切り販売」を実施したら店は続けられない、などと言ったセブンイレブン・ジャパンの社員の発言が加盟店の合理的な経営判断の機会を失わせ、「見切り販売」の実施取りやめにつながったという判断です。
1、「見切り販売」したら、店は続けらないとの発言(①過失行為)
↓④因果関係
2、加盟店の合理的経営判断の機会喪失(②利益侵害)
↓④因果関係
3、「見切り販売」実施取りやめ(③損害額の発生)
という判断を東京高裁はしたということになります。
妥当性
この事件では、東京高裁判決よりも先に公正取引委員会がセブンイレブン・ジャパンに「見切り販売」を制限したとして独禁法違反(優越的地位の乱用)で、排除措置命令を出していました(2009年)。
セブンイレブン・ジャパンの行為は独禁法に反する違法行為に該当します。
この行為は民法でも違法です、と東京高裁は判断し、その判断を最高裁が指示したのが本件でした。
セブンイレブン・ジャパンの社員が「見切り販売」をしたら店は続けられないと発言したのでしたら(訴訟ではそう認定されました)、独禁法違反(優越的地位の乱用)に該当しますし、また、東京高裁と最高裁の判断も民法的に妥当だと思います。
まとめ
「見切り販売」したら、店は続けられないとの発言は、加盟店に対して優越的地位にあるセブンイレブン・ジャパンがその優越的地位を乱用したことに該当しますので、独禁法違反であることは間違いありません。
東京高裁は独禁法違反についての判断はしていませんが、損害賠償請求訴訟においても、セブンイレブン・ジャパンの上記行為は違法行為である、というのが東京高裁と最高裁の結論でした。
感想
経済的には「見切り販売」は合理的だと思います。
しかし、セブンイレブン・ジャパン側はそれに強行に反対しました。
理由の1つが安売り合戦に巻き込まれる、ということにあります。
ただ、廃棄直前の弁当類に限定した「見切り販売」ですから「見切り販売」が安売り合戦に巻き込まれるという因果関係は薄いように思いますが・・・。
フランチャイズ契約の中でも、販売価格は自由に決定することができるという条項があったようですから、法的にも加盟店側に理があると言わざるを得ないかなと思いました。