【グーグル(Google)独禁法違反の疑い(EUが警告)】

2015年4月18日 0 投稿者: 行政書士 真栄里 法務事務所

約2,100字(読了≒4分)

グーグルにEU競争法違反の疑いが・・・

 『EU グーグルを独禁法違反の疑いで警告
 グーグルがEU競争法、日本でいうところの、独占禁止法(独禁法)に規定された優越的地位の濫用禁止に違反した疑いがあるとして、EU当局から警告を受けたようです。
 グーグルは、自社の比較ショッピングサービス「Google Shopping」を検索結果ページにおいて優先的に取り扱っている疑いがあるそうです。

日本の独禁法で言うと

 グーグルはヨーロッパにおいても、検索エンジンの圧倒的シェアを占めています。90%を超えるとのことです。
 これはつまり、検索サービスにおいて、グーグルが優越的地位に立っていることを意味します。グーグルはその優越的地位を利用して、自社のショッピングサイトをより目立つように表示したり、競合サービスの表示を下げる操作(検索操作)をした疑いがもたれています。
 もし、この操作が事実であったとすると、日本の独禁法で禁止されている「優越的地位の濫用」にあたりそうです。

「優越的地位の濫用」とは?

 当事者間で、「主」・「従」の関係が形成されている場合、「主」に従属している当事者はもはや取引先を変更することは困難です。そうすると、競争が機能していれば設定されないような取引条件が設定されがちとなります。これでは、従属者は「主」の言いなりになります。
 このような状態は、サービス利用者の利益を著しく害する状態です。価格を不当に上げられても文句を言えなくなるわけですから。
 そこで、独禁法は、「優越的地位の濫用」を禁止しているのです(独禁法2条9項5号、6号ホ)。
 日本でも、コンビニのフランチャイズ契約などで過去に問題となった事案がありました。

グーグルの場合、何が問題なのか?

 では、グーグルの場合、サービス利用者にどのような不利益があるのでしょうか?
 グーグルがしたと疑われている行為は、自社のショッピングサイトをより目立つように検索結果を操作したことです。
 ただ、このショッピングサイトは、商品の比較サイトですから、このサイトを見た利用者はより安い商品を買うことができます。
 ということは、グーグル検索エンジンの利用者に経済的損失はないはずです。
 しかし、EUはグーグルの当該検索操作(疑いですが)を問題視しています。
 もちろん、競合企業にとっては、グーグルの検索エンジンで検察結果が下位に下げられることは、死活問題です。公正かつ自由な競争を確保するという独禁法の趣旨(EU競争法の趣旨も同じです)からは、もしグーグルの検索操作が事実であれば違法行為となります。
 しかし、ことは経済だけの問題ではないと思います。

『思想(情報)の自由市場』

 情報化時代の現代においては、情報はとても重要です。
 特に、民主主義国家においては、自由な情報の流通が不可欠です。
 情報が制限された国家では民主主義は機能しません。そのため『思想(情報)の自由市場』を確保することが極めて重要となります。
 『思想(情報)の自由市場』においては、情報の自由な流通を確保する必要があります。
 「情報の自由な流通」とは、情報発信が不当に制限されず、また、情報の受領が不当に制限されない状態をいいます。
 情報化時代の現代においては、世界に存在する様々な情報を、検索エンジンを通して受領することが多くなっています。「検索エンジン」は市民1人1人が情報を入手する際に不可欠な存在となっています。
 このような状況下で、もし検索エンジンが検索操作されていたとしたら・・・。
 検索サービス利用者は、操作された情報を受け取らされている、ということになります。
 『思想(情報)の自由市場』の崩壊です。

情報の独占(操作)禁止

 独禁法は、経済法ですから、消費者の利益保護、ひいては国民経済の健全な発達を促進することを目的とします(独禁法1条)。
 しかし、独占(操作)が禁止されるのは、経済面だけではないはずです。民主主義社会においては、情報の独占(操作)も禁止すべきです。
 一旦、検索エンジンに不当な操作を加えれば、検索エンジン提供者は様々な面で不正な操作を施す誘惑にかられます。
 その誘惑に負けてしまうと、サービス利用者は操作された情報を受け取ることになり、適切な判断をすることができないという不利益を被ります。
 その不利益は、経済的不利益であることだけでなく、政治的情報の操作による政治的不利益であることもあります。
 気をつけなければなりません。
 情報独占(操作)禁止の観点からも、検索エンジンの操作は禁止すべきだろうと思います。

「公共財」ということ

 情報化時代の現代においては、検索エンジンは民間企業が提供しているとはいえ、もはや「公共財」になっていると思います。
 検索エンジンの圧倒的シェアを占めているからこそ、グーグルの検索エンジンは「公共財」にふさわしい検索エンジンであり続けて欲しいと思います。

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