<中国で得た判決をもって日本で強制執行することができるのか?>

2015年3月24日 0 投稿者: 行政書士 真栄里 法務事務所

約900字(≠1分30秒)
写真はアメリカの連邦最高裁判所です。

事件のあらまし

 中国の裁判所が損害賠償を命じた判決に基づき日本国内で財産差し押さえなどの強制執行をすることができるかが問題となった訴訟において、東京地裁で判決がありました。
 今回の訴訟の原告は、中国籍で中国在住の中国人。原告はある書籍の記述で名誉を傷つけられたなどとして、著者(日本人)と出版社(日本企業)に 対し、80万元(約1500万円)の損害賠償などを求めて人民法院(中国の裁判所)に訴えを提起しました。その判決が原告の全面勝訴で中国で確定したので、中国でのその確定判決に基づき、日本で強制執行すべく、東京地裁に訴えを提起したというのが今回の事件です。

【結論】

 結論は、中国の確定判決をもって日本で強制執行をすることはできない、として原告(中国籍、中国在住)の請求を棄却しました。

【参考までに】

 日本の民事訴訟法、そして、日本の最高裁判所の先例によれば、東京地裁のようになります。
 外国裁判所の(確定)判決が日本で効力を持つためには、「相互の保証があること」(民事訴訟法118条4号)が要件の1つとなっています。
 「相互の保証」というのは、簡単に言いますと、日本と中国で同種類の判決があった場合に、日本のその判決が中国で承認・執行され、中国のその判決も日本で承認・執行されること、をいいます。
 この訴訟で、東京地裁は、

中国で日本の裁判所の同種判決が承認、執行される余地はなく、日本と中国の間には相互の保証があるとは認められない

と判断して、「相互の保証」はない、よって、原告の請求は認められない、としました。
 同じ事件について、国家間の判決に矛盾が生じる事態が発生することになりました。こういった事態の発生を防止するための規定が民事訴訟法118条4号の「相互の保証があること」という要件なのですが・・・。
 相手国が先に日本の判決を承認・執行しない限り、日本も相手国の判決を承認・執行しないということですから、対立している国家間で「相互の保証」が認められることは事実上なさそうです。
 国家主権が司法の場面で衝突した典型的な事案でした。