TRUSTと遺言書
2014年6月9日
約2350字(読了≒3分50秒)
目次
TRUSTは日本でも有効?
Brown弁護士のところに行って、今後のTRUSTの扱いについて相談の補助をしてきました(間に通訳を入れて)。
私が、日本の国際私法によれば、おそらくこのTRUSTは日本でも有効となるだろうと伝えると、彼は、「このTRUSTの他に、日本で別の契約書を作成して2本立てでいけばいいのでは?」と言ったとのことです(話すスピードが異常に早くて私はほぼ聞き取れず・・・)。
しかし、2本立てではややこしいことになると伝えてもらうと(Mr. Brownの話すスピードにビビって、もう英語で会話することは断念。事前に準備していたのに・・・)、彼は、何やら一生懸命に話しています。
つまりは、家はもう売れたのかだの、エスクローはどうなっているだのを聞いていたようです。で、依頼人(兼通訳)がそれに応えて互いにしばらく話をしていました。
そうすると、彼は、「Then, you revoke the TRUST and make a simple WILL」と言ってきました。
これは私も聞き取れました。理由は聞き取れませんが、結論としては、TRUSTを撤回して、簡単な遺言書を作ろうということでした。
何故TRUSTを作ったのか?
そうできれば、話はとても簡単になるので、こちらとしては大歓迎ですが、ひとつ疑問がありました。
遺言ですむのなら、なぜTRUSTにより財団を設立したのか?ということでした。初めから遺言だけで良かったのではないか?という疑問があったのです。
その疑問を解決しなければこちらがOKサインを出すことはできません。
その疑問を通訳をしてもらってMr. Brownに聞いてもらいました。
そうすると、TRUSTで財団を設立したのは、信託者自身から信託者の財産を守るためであったということのようでした。
つまり、TRUSTにより財団を設立しておけば、実質的には自分の財産であっても、TRUSTに書かれてある行為しかできないことになるので自分の財産の浪費を防止することができるのです。
TRUSTがなければ、自分の財産は自分で使い放題ですが、TRUSTがあれば実質的には自分の財産とはいえ、勝手には使えないことになるのです(判断能力になんの問題がなくても)。
たとえていうと、「飲みに行ったときは、飲酒運転を避けるために飲む前に自分の車の鍵を他の人に預ける」ようなものです。
TRUSTの趣旨は、現在の自分の意思で将来の自分をコントロールするということです。通訳を通してそう聴くと成程と思いました。
Mr. Brownは財産(不動産や預金)を守るために、TRUSTにより財団を設立したようでした。
TRUSTを撤回して、新しいWILLを作成しようと彼が提案したのは、日本に帰る日が近い今となっては、アメリカで作成したTRUSTが日本で有効となるよりも、日本で新たにTRUSTに似た契約(財産管理契約や任意後見制度)をすれば良いだろうとの判断に基づいていると思いました(もし、このTRUSTを維持すると、日本にいる信託者が法的無能力者となった場合、信託者は日本にいるが、受託者はアメリカにいるので、連絡やら財産管理の実効性やらでかなり面倒なことになりますから。信託者と受託者の間に英語のわかる人が介入する必要も出てくるでしょう。かなり面倒です。私が心配していたことでもありました)。
TRUSTの撤回後は?
もっとも、TRUSTの撤回後、日本で似た制度を利用するまでは「車の鍵を自分で持ったまま飲酒をする」ような状態(いわば空白地帯)が生じます。
しかし、できるだけ早く日本で新しい契約を締結すれば、その空白地帯の発生を最小限度に抑えることができるでしょう。
先のTRUSTを維持することで生じる不便さの方がデメリットは大きいと私も思います。
ということで、遺言書を早く作っておくことでアメリカにいる間は対応しようということになりました(ちなみに、この遺言書は日本でも効力を持ちます)。
遺言書の作成
後は、相続人の指定と相続割合を決めて遺言書を作成することになります。
しかし、この遺言書もsimpleとはいえ、日本よりも細かいです。
たとえば、直系卑属のいない甲さんが5人の兄弟のうち、2人(AとB)だけに均等に相続をさせたい場合、日本では、その旨の記載をすれば十分でしょう。しかし、アメリカでは、甲よりも先にAが死亡したら誰を相続人とするか?甲よりも先にBが死亡したら誰を相続人とするか?ということを書くとのことです。身内の人数が多い沖縄だとさらにややこしくなりそうです。
遺言者の意思が絶対なのです。なので、その遺言者の意思があやふやだと(日本方式はアメリカからするとあやふやになります)、遺産の帰属が確定するまでにかなりの時間(1年はかかるようです)がかかるとのことです(probateという裁判所が介入する遺言検認手続があるそうです)。
日本でしたら、甲より先にAが死亡すればAの直系卑属や配偶者が相続人となるなどの法定相続人の定めが使われるのですが、アメリカでは基本、被相続人の意思次第です(遺留分制度というのもないようです)。
遺言者は、遺言書作成時に相続人の確定が要求されます。
個人主義の確立した国なんだなと思いました。
遺言書の作成は、【真栄里孝也 行政書士事務所】の法務博士で行政書士の真栄里孝也までご相談下さい。
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