同性婚を認めない現行法違憲判決は非民主的な判決か?

2021年3月19日 0 投稿者: 行政書士 真栄里 法務事務所

違憲判決

2021年3月17日に、札幌地裁が、同性婚を認めない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定が憲法14条1項に違反し違憲であるとの判決を出しました(【判決要旨全文】同性婚認めないのは「合理的根拠を欠く差別」 札幌地裁が違憲判決)。
その内容の検討はここでの主題ではありません。
ここでは、この判決について、多数者はその結論を認めないから民主主義に反する、という意見について検討したいと思います。

この違憲判決は、民主主義に反するのか?

多数者はその結論を認めないから民主主義に反する

という意見の前提は、

民主主義=多数者支配民主主義

です。
憲法が、多数者支配民主主義を採用しているのであれば、その意見ももっともです。
ですが、その前提自体が違います。
憲法が採用する民主主義は、決して多数者支配民主主義ではありません。
立憲民主主義を憲法は採用しています。
民主主義といえども”立憲主義”に反してはならないという制約があるのです。
多数派がNoという事柄であっても、そのNoが憲法に違反するのであれば多数派の意見は否定されます。
これが憲法に従った民主主義、つまり立憲民主主義です。

そもそも民主主義はなんのため?

そもそも民主主義はなんのための制度でしょうか?
民主主義は、自由を確保するための手段です。

民主主義=自由確保の手段

民主主義は自由確保のための手段にすぎませんから、民主主義の結果がそのまま肯定されるということはありません。
民主主義の結果が自由を侵害する場合は、裁判所が積極的に介入して自由を確保する必要があります。
そのために民主政過程の外にいる裁判所を憲法は置いているのです。
民主主義は万能ではありません。過去の歴史(ナチスドイツなど)を見ても明らかです。そこをしっかりと理解することが大切だと思います。

自由とは?

では、”自由”とはなんでしょうか?
端的に言えば、

自由とは、他人を害しないすべてのことをなしうること(フランス人権宣言第4条)

です。
フランス革命が起こった原因は、比較不能な価値観・世界観が生まれて、それまでの中世的な一元的価値観・世界観と対立したことにあります。
フランス革命を踏まえて、比較不能な価値観・世界観を保障するために憲法が創造された(つまり、立憲主義が誕生した)のですから(長谷部恭男「憲法 第7版」(新世社、2018年)11頁参照)、多数者が自己の価値観・世界観を少数者に押し付けることはこの立憲主義に反します。

立憲主義によって制約を受ける民主主義

民主主義は、立憲主義によって制約を受けているのですから、多数者は、多数派であるから正しいんだと主張するのではなく、少数者の意見に真摯に耳を傾けて少数者の不自由を少しでも想像することが求められていると思います。
今の多数派もかつては少数派だったかもしれませんし、これから少数派になることもありえます。
自分が多数派になろうとも少数派になろうとも、異なる価値観・世界観が共存することができる社会が望ましいのではないでしょうか?
これが憲法の求める国のあり方です。

---終---

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
日頃からのご支援、誠にありがとうございます。
特定行政書士による政治・社会問題の法的経済的言語的分析ブログです。
少しでも多くの方に読んでいただきたく、にほんブログ村に参加しております。
何か感じるものがございましたら、クリックをお願いいたします。
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
ありがとうございました。